職人芸

時計のバックルがバカになった。

緩くなってすぐに外れるのだ。それでまず近所の時計屋に持って行ったのだが、「ちょっとウチでは修理は難しいです」と言われた。


その後あちこちの時計屋に持って行ったのだが、返事はどこも同じだった。東急ハンズにも持って行ったがダメだった。


それなら自分の時計の販売店に持って行けばいいのでは、と思われがちだが、持って行けば恐らく修理ではなくて部品交換となるだろう。そうなると私の時計はバックルだけで20万くらいはするので、販売店に持って行くのは最後の手段に残しておきたかった。


ところがやはり、どこの店でも修理不能ということなので、いよいよ諦めかけていた。


先日、仕事前に職場の近くのスーパーに、古い時計屋があるのを思いだしていってみることにした。

奥の方の椅子に老眼鏡をかけた店主らしき人が、新聞を目を細くして読んでいた。

私が店に入ると女性が出てきて応対してくれた。時計を手渡し待つこと1分。



私の時計を持って女性が帰ってきた。(ああ、やっぱりダメだったか)と想いながら時計を受け取った。

女性)「はい、どうぞ」

(私)「え!?な、なおったんですか!?」

(女性)「ええ」

(私)「え!?え!?これどこのお店に持って行っても、修理できないって    いわれてきたんですよ!」

(女性)「あちらの、職人技です」

(私)「えぇぇぇぇぇ!すごいですね!!!ありがとうございました」


奥の職人にお辞儀をすると、職人さんは面倒くさそうに少し頭をさげると、再び老眼鏡を鼻にかけながら新聞に目を移した。


いやあ、おみそれしました。


東岸和田サティ1階の時計屋さんです。