佐野元春さんの詩を転載します(http://www.moto.co.jp/)。
それを「希望」と名づけよう
佐野元春
街が揺れた夜、君はひとり無断で、
市営プールに潜りこみ、身体を水に浸したそして暗がりの中、瞑想した
人は時に、光に水に、雨に風に、感謝し、
人は時に、光に水に、雨に風に、屈服するこの闇の向こうに震えるのは
誰か、嘆きの声同胞の不在は確かに不可解だ
それはそうだ
しかしどうだろう君は偽善の涙など流さないと誓ってくれ
決まりきったお悔やみなど無用だと言ってくれ夜が明けて、そこにいつもどおりの太陽が照り、
草木は首をもたげ、
鳥たちは空を往くあぁ、美しくも残酷なクリシェ!
一方で、
君の身体の細胞ひとつひとつに染みいる光はどうだ傷だらけではあるが依然雄々しいその筋肉はどうだ
そうさ、君は同胞の不在を気にかけているんだろうが、
たとえば、
偶然にも生き残った君の生を讃えてみてはどうだ?
たとえば、
生き残ったことへの幸運を噛みしめてみてはどうだ?不謹慎だとわめく偽善者を後に残し
君が光を放つことで、友を弔うんだそれを「希望」と名づけていいんだよ
余震は続く
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2011年 誕生日に寄せて
佐野元春