- 作者: 湊かなえ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/08/05
- メディア: 単行本
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どんな話か予備知識もまったくなく、また帯に書かれている様々な感想にも目を通さずに、読むことにした。
読み始めて20ページくらいしてから、その異様な世界に引き込まれていく感じで、一気読みしてしまった。
まだ読んでいない人のために、内容は書かないが、物語はある人物の告白から始まる。
ある事件の真相が語られるのだ。
その告白を聞いていると(あえて読んでいるではなく)、告白者の深い憎悪と、ある種異様な感情、恐怖がジワジワと伝わってくる。
しかし、その感情を異様と言い切れない複雑さが、その事件には絡んでいる。
さらに犯人に対する怒りが沸々と沸いてくる。
そして告白者が犯人に対してもっている「怒り」に同調しながらも、行った「復讐」に対しては、薄気味悪いものを感じてしまう。
第2章になると、この事件に関わった別の人物の告白が始まる。
すると奇妙なことに、第1章であれほど怒りの対象と捉えていた犯人に対して、同情の気持ちが芽生えてくる。
物語は第3章、第4章・・・と告白者を代えて、事件の前後の状況などが語られていく。
そうして、真の事件の真相が明らかになっていく。
その告白を聞く度に、告白を聞いている自分の怒りの対象が変わってくるのだ。
つま倫理観が揺れるのである。
私は、何かマスコミの表面的な報道にすぐに振り回される大衆の姿が重なった。
筆者がどういう意図を持って、こういう小説を書いたか非常に興味がある。
この小説の中では、事件について何も解決していない。
エンディングで「あること」が起こるが、それで告白者の気持ちが晴れるはずもない。
非常に陰湿なイジメを目撃した気分だ。
しかし、よくよく考えてみると、実際に犯罪被害者というのはこの小説のように、「解決」なんてものはあり得ないのかもしれない。
こ作品は2009年本屋大賞第1位らしい。
全国書店店員が選んだいちばん売りたい本ということみたいだ。
本屋の店員さんというのは、こういう本を読ませたいのか??
それが極めて疑問。
一気読みしてしまったということは、面白かったのだと思うが、この作品を「面白かった」と書くのには非常に抵抗感がある。
なので、友人に「これ面白いから読んでみて!」とはいう気になれない。
「気持ちわるぅい感じを味わいたかったら読んでみて」
かな。
読後の気持ち悪さ・・・・・
ちょっと読んだ後は、軽いリハビリが必要。
ちょうど良かった。
こんなときに万城目はピッタリだ。