その2

いつものように特急に乗って新大阪駅へ向かった。

自由席の最後尾に座ったのだが、通路を挟んで反対側の座席にド派手な格好で濃すぎる化粧の女性が座っていた。

列車が走り始めて5分ほど経っただろうか。

その女性が特急車内にもかかわらず、携帯電話で大声でしゃべりはじめた。


私は心の中で(おいおい)と思ったが、読書に集中していたので別段気にしていなかった。

ただ、時折耳に入る彼女の言語は日本語ではなく、東南アジア系のものだった。

暫くすると車掌が検札に来た。

車掌は私への検札を終えると、依然として携帯電話で話し続けている女性に対して、ひと言注意したようだった。


しかし、どうやら日本語が通じないようだ。


車掌は諦め、そのまま車内を後にしてしまった。


その後天王寺を過ぎ、西九条を過ぎ、新大阪が近づくと車内アナウンスが流れた。

あと、約5分で新大阪に到着します

私はその声を聞いて、読んでいた本を鞄にしまった。


その直前まで、隣の女性はずーーーーーーーーーっと携帯でしゃべりっぱなしだったようだ。

結局50分近く話しっぱなしだったことになる。

車内で携帯による通話をしてはいけないというマナーを、この外国人は知らないのか?

この常識は日本だけのものなのか?


などと思いつつ、ぼーっと景色をみていた。


と、その時。


横の女性が話しかけてきた。

スイマセン。テンノウジはマダデスカ?

初めてその女性の顔を真正面から見た。やはり東南アジア系だ。

私はこう返事した。

とっくに過ぎたよ。

すると女性は、ビックリしたような表情をしたので、続けて私はこう言った。

おたくが、いつまでも電話でしゃべってるからやんか!


すると女性は舌を出して、「スイマセン」と頭をぺこりと下げた。

これで終わりかと思いきや、さらに女性が私に質問をかぶせてきた。

テンノウジニハ ドウヤッテイッタライイデスカ?

これは困った。


ちゃんと説明すると、こうだ。

一端新大阪でおりて、東海道線に乗り換えて大阪駅で下車。大阪駅から環状線に乗り換えて天王寺へ。

私はこれらの説明を、日本語もままならない彼女にしても難儀するだけだろうと思ったので、新大阪で一端降りたら、駅にいる制服着てる人にきくといいというように言った。

彼女は「アリガト」といって、それで会話は終了した。


新大阪に着いた。


新幹線の時間が迫っていたので、特急を降りるなり早足で歩き始めた。

ふと後ろを振り向いた。

一瞬、彼女がどうなってるのかと思ったからだ。

彼女は駅でキョロキョロして駅員さんを探してるようだった。

見かねた私は、引き返し彼女の元へ。「おいで」と手招きして彼女を駅員の元まで連れて行った。彼女は再度「アリガト」とお辞儀をした。


お人好しなのかな? 俺・・・・・

それにしても、よく外人に声かけられる・・・なんでや????